マレーシアから見た日本 TOPICS

マレーシアから見た日本

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投稿者:陸培春(ルー・ペイ・チュン)

阿部改憲で戦争が近づく

9年前、支持率の暴落と健康問題により、やむにやまれず首相の座を辞したときの状況とは異なり、安倍首相は今回の参議院選挙(注:2016年7月)で大勝し、連立与党は3分の2の議席を獲得して平和憲法を改定する許可証を奪い取った。これは日本がますます戦争に近づき、日本人がよりやすやすと戦禍に巻き込まれ得るようになったことを意味している。

今回、いとも簡単に安倍が凱歌をあげられたのは、野党の魅力が明らかに足りなかったからである。特にかつての与党で鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の3名の首相を輩出した民進党(前民主党)が日本を良くすることができず、換言すれば、二大政党制のもう一方の大政党である民進党に対する日本の選挙民の信頼は失われ、再度自民党を選ぶしかなかったのである。不憫にも日本の選挙民にとっては選択の余地が少なく、理想的でなくても我慢せざるを得ないことが、保守自民党の「一党独裁」という奇妙な状況を生んでいる。これは日本政治の一大悲哀であるとも言える。

長引くスキャンダルにもかかわらず、 阿部は異例の長期政権を続ける。 ニューズウィーク2018 9/11

安倍が日本の「聡明」で優れた政治家であることは否定できない。最近の衆議院選挙では、彼は巧妙に議論をそらし総選挙の争点を経済問題に集中し、デリケートでホットな争点である「戦争法案」については黙して語らなかった。今回の選挙も安倍はセオリー通りに行動し、「アベノミクス」についてのみ大いに語り、自らがハンドルを握る日本経済号は2速から3速にギアを上げ成功は目前であるというデタラメをうそぶき、さらにアクセルをふかす許可を選挙民に求めたのだ。

アベノミクスには、大胆な金融政策、機動的財政政策、民間投資の喚起による成長戦略という「3本の矢」があり、安倍は自らを「救世主」と考えている。ある専門家の評価によると、それは「ABEノミクス」だという。金融政策の成績はA、財政政策はB、民間投資による成長戦略はE、すなわち不合格だというのだ!景気は芳しくなく世論の反発で票を失うことを恐れ、安倍は8%から10%への消費税引き上げを断念した。中小企業の苦境はさらにひどく、利益は減少し、地方の多くの商店街はさびれたゴーストタウンと化している。多くの若者は仕事は見つかるが、生活が保障され安定した正規採用ではなく、不正規採用を甘受している。

奇しくも、テレビは党首討論会を積極的に開いて、各党が議論をぶつけ合い、それによって真相がより明らかになるような政策討論をあまり視聴者に提供せず、野党第一党の民進党は進んで安倍となれ合い、口裏を合わせて経済問題ばかりを語り、「反対」する党であるはずの野党の役割を忘れ、改憲の危険性をするどく指摘せず、安倍の武力乱用主義が悪い結果を招き、将来徴兵制を導入する野心とアメリカの手下となるという恐ろしい見通しについても警告していない。野党の対応は手ぬるすぎ、紳士的すぎ、あまりにやさしすぎると言わざるを得ない。このような状況において選挙民は再度野党に神聖な一票を投ずるであろうか。

実際、安倍は善良な選挙民を愚弄し、票を失うことを強く恐れて選挙前には平和憲法改定の主張には一切触れず、選挙で三分の二の議席を獲得すると、すぐさま自らの宿願と野心の実現に向けて策を巡らせた。彼は誠実な政治家ではまったくなく、改憲のためには手段を選ばず、国民を騙そうとしているように見える。彼の大勝は、ある意味では、選挙は決して万能でも信頼できるものでもなく、また、世界の人々に日本の政治が依然として未熟で二流であることを示している。これは日本人にとっての一大不幸と言える。

日本は国情が他の国々と異なる特殊な国家である。日本人も特別で、多くの場合、どちらつかずで是非をはっきりさせず、往々にして問題がうやむやになる結果となる。先日、イギリスではブレア元首相がイラク戦争に加担した責任を追及され、彼は戦犯と見られているが、当時、日本の首相であった小泉純一郎もまたブッシュ大統領を最初に支持し、130億ドルの戦費を拠出したが(注:正しくは湾岸戦争での日本の拠出額)、日本人で彼の戦争犯罪を追及している者はいない。こうした日英の姿勢の大きな違いには深く考えさせられる。

今日、安倍は「戦争法案」を推し進め、つづいて戦争を禁じる憲法9条の改定を企図し、依然としてアメリカの手下になろうとしている。安倍にとっては、中東における戦争と小泉の軽率な行動は貴重な教訓となっていない。このようでは一旦自衛隊が「十字軍」あるいは多国籍軍となれば、日本もまたテロリストの標的となって平和は絵に描いた餅となり、その結果は想像するだけで恐ろしい。

安倍は一度や二度だけでなく再三日本の選挙民を愚弄しているのに、選挙民がなぜそれに無関心なのかわからない。時が過ぎてしまうと、世間は静かになり、選挙民は安倍に愚弄されたことをすっかり忘れてしまい、反動政治家は自由自在に振る舞え、秘かにほくそ笑んでいるのである。

日本の政治家は知るべきである。彼らの一言一句、一挙手一投足はすべて歴史の一コマとなり、後世の人々が複雑に錯綜する過去の政局を振り返れば、たやすくかつ明確に真相と事実を把握できるのだ。もし政治家が間違ったことをし、選挙民を愚弄すれば、その罪と醜行は際立ち、そうした政治家には所謂「歴史の罪人」という永遠に雪ぐことのできない汚名が着せられるのである。

2016年7月24日『南洋商報』言論版

 

 

 

投稿者:陸培春(ルー・ペイ・チュン)

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